会社解散・清算の税務 [HP新着情報の貯蔵庫]
一般的に商売をやめる時に「会社を畳む」とか「会社を解散」するなどと言います。
今日は会社解散・清算の税務について、その一連の流れをお話ししようと思います。
会社と言われるものには、株式会社・有限会社・合同会社などの法人と個人による事業の場合とがあります。
個人の事業をやめた場合の流れ
個人の事業をやめた場合には、速やかに所得税の廃業届出書等を所轄税務署に提出し、翌年に所得税確定申告書を提出して終わりとなります。
法人の事業をやめた場合の流れ
1.休業の場合(今後事業を再開する可能性がある場合)
所轄官庁のうち都道府県税事務所と市町村役所に休業の届出書を提出し、休業した日を含む事業年度まで確定申告書を提出し、翌事業年度以降は都道府県民税及び市町村民税の確定申告書は提出不要となります。※1
なお、休業中でも法人税の確定申告書は提出しなければなりません。※2
※1 住民税法には休業に関する明文規定は無く、法律上は休業による申告書提出不要という規定は存在しません。ただ一般的に休業中は赤字申告となり住民税の均等割額が発生してしまいますが、自治体ごとの判断で休業中の税負担を考慮して休業期間中は均等割額を免除しているようです。
※2 実際には休業中は赤字なので無申告の場合が多いようですし、無申告の場合でも赤字なら納付を伴うペナルティーは無く、青色申告の取消はありますが、青色申告の取消後2年を経過すれば申請により青色申告を復活させることが出来ます。
2.解散・清算の場合(これを最後に法人を消滅させる場合)
①解散とは?
株式会社・有限会社・合同会社などの法人は、法務局に法人として登記されていますので、法人を消滅させる場合には、まず解散の登記を行い、それから清算事務を経て、清算事務が完了したら清算結了登記を行うことによって法人登記が消滅します。
法人を消滅させるのに二段階の手続きを踏む理由として、法人の取引先や出資者を混乱させないためだと考えられます。
②清算結了とは?
解散登記の後、法人が所有する固定資産等を処分、借入金・未払金などの債務を精算したら、残った資金化された財産を株主に分配します。この解散登記後の一連の清算事務完了をもって法人を消滅させる清算結了登記を行います。
③税務のタイムスケジュール
(1)解散登記&解散確定申告
法人の解散登記が済んだら税務官署※3に法人異動届出書により法人を解散した届出をし、その解散の日から2月以内に解散確定申告書を提出しなければなりません。
なお、解散してから清算結了に至るまで1年以上要する場合には、解散の日の翌日から1年の期間を1事業年度として確定申告書を提出しなければなりません。
※3 所轄税務署・所在地の都道府県税事務所・所在地の市町村役所
(2)清算結了登記&清算確定申告
法人の清算結了登記が済んだら税務官署※3に法人異動届出書により法人を清算結了した届出をし、その清算結了の日から1月以内に清算確定申告書を提出しなければなりません。
なお、法人が株主に対する残余財産の分配時に、みなし配当が生じる場合には「平成〇〇年分 配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書合計表」を原則として残余財産の分配を行った日から1月以内に所轄税務署に提出しなければなりません。
④平成22年の法人税法改正の影響
現行の解散・清算の税務は平成22年10月1日施行の法人税法改正による手続きに基づいています。注意が必要な点としては、平成22年9月30日以前に解散した法人は改正前の旧法による手続きに拠らなければなりません。
3.被相続人が被相続人の経営する同族会社に貸付金がある場合
仮に父親が経営していた法人が休業中若しくは解散後いまだ清算結了していない場合で、父親がその法人に対して帳簿上貸付金がある場合には、例えその会社が債務超過で貸付金の回収が不可能であっても、父親が亡くなった場合(被相続人)には、その貸付金は被相続人の相続財産となります。
現行の法人税の規定では解散後清算による残余財産がないと見込まれる場合には、期限切れ欠損金※4も損金の額に算入できますので、期限切れ欠損金の額を限度として、貸付金を債務免除益として無税償却することができます。
※4 期限切れ欠損金とは、法人の純資産の部に表示される利益剰余金のマイナス金額のうち青色欠損金の額を除いた金額を指します。
相続税の心配が無い場合には休業・解散後そのまま放置でも良いでしょうが、相続税対策を講じる必要がある方はこの制度が使えるか是非検討してみて下さい。
コメント 0